失業保険の受給資格を持ち、ハローワークで失業保険を受け取ることができるようになると、「自分はどれくらいの金額を受給できるのだろうか」と気になりますよね。
失業保険を受給できる金額は、以前働いていた会社でどれくらいの給与をもらっていたのか、などの人それぞれの条件によって違っています。このページでは、失業保険でどれくらいの金額を受け取ることができるのか説明します。
なお雇用保険制度の中では、失業中・求職中に支給される手当のことを「基本手当」といいます。ハローワーク情報局ではわかりやすく説明するために「基本手当=失業保険」として説明しています。詳しくは「Q.失業保険とは?」をご覧ください。
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失業保険の総受給金額はどうやって決まるの?
失業保険でもらうことができる給付金額の全体額は、
- 失業保険の全受給金額 = 1日あたりの給付額(基本手当日額) × 給付日数
という計算で決まります。
まず、1日あたりの給付金額を計算し、その金額に通算で何日分受け取ることができるのか、を掛け合わせるのです。
この時、1日あたりの給付金額も、給付日数も、人それぞれ違ってきます。
1日あたりの給付金額は、
- 会社を退職したときの年齢
- 会社を退職する直前6ヶ月分の賃金(給与・給料)
によって決まり、給付日数は、
- 会社を退職したときの年齢
- 雇用保険の加入年数、いわゆる勤続年数
- 会社を退職した理由
によって決まってきます。
失業保険 総支給額の計算式
では、詳しく見ていきましょう。
失業している日に受給できる1日あたりの給付額は?
失業中に受給することができる1日あたりの金額を「基本手当日額」といいます。
ひとくくりに失業保険の受給者と言っても、それぞれ年齢や離職前の収入、離職理由などの条件は違っています。では、基本手当日額はどのようにして決められるのでしょうか。
実際にご自身の条件を確認しながら、およその基本手当日額を算出していきましょう。
およその基本手当日額の算出方法
1.離職前6ヶ月分の賃金を合計する
基本手当日額を調べるには、まず、会社を退職する直前6ヶ月分の賃金(給与・給料)の合計金額が必要になります。給与明細等で確認しましょう。
ちなみに、このときの「賃金」には残業代や手当は含めますが、賞与(ボーナス)は含みませんのでご注意ください。
2.賃金日額を算出する
離職前6ヶ月分の賃金合計が出すことができたら、賃金合計を180で割ります。これを「賃金日額」といい、失業保険(基本手当)給付額の基準となります。
- 賃金日額 = 離職前6ヶ月分の賃金合計 ÷ 180
3.給付率を調べる
基本手当日額は、賃金日額のおよそ50~80%と決められており、この割合を給付率と呼びます(60~64歳の方については、45~80%となります)。賃金の低い方ほど相対的に高い給付率となっています。
各個人の給付率は、離職時の年齢と賃金日額によって決められています。離職した時の年齢によって給付率表が異なります。まずは表1であなたの離職時の年齢と、対応する給付率表を確認してください。
例えば、離職したのが31歳の時の方は、表2の給付率表Bを参照してください。
(表1)離職時の年齢と給付率表の対応
離職時の年齢 | 給付率表 |
30歳未満 | A ※下の表Aをご覧ください |
30歳以上45歳未満 | B ※下の表Bをご覧ください |
45歳以上60歳未満 | C ※下の表Cをご覧ください |
60歳以上65歳未満 | D ※下の表Dをご覧ください |
65歳以上 | A ※下の表Aをご覧ください |
4.およその基本手当日額を確認する
表1からご自身の当てはまる給付率表がわかったら、「2.」で算出した賃金日額と給付率表を照らし合わせて、およその基本手当日額を確認してみましょう。
(表A) 給付率表A:30歳未満 もしくは 65歳以上
賃金日額 | 給付率 | およその基本手当日額 | 算出方法 |
2,289円以下 | ― | 1,832円(下限額) | ※1 |
2,290円以上~4,580円未満 | 80% | 1,832円~3,663円 | ※2 |
4,580円以上~11,610円以下 | 80~50% | 3,664円~5,805円 | ※3 |
11,610円超~12,740円以下 | 50% | 5,805円~6,370円 | ※2 |
12,740円(上限額)超 | ― | 6,370円(上限額) | ※1 |
(表B) 給付率表B:30歳以上45歳未満
賃金日額 | 給付率 | およその基本手当日額 | 算出方法 |
2,289円以下 | ― | 1,832円(下限額) | ※1 |
2,290円以上~4,580円未満 | 80% | 1,832円~3,663円 | ※2 |
4,580円以上~11,610円以下 | 80~50% | 3,664円~5,805円 | ※3 |
11,610円超~14,150円以下 | 50% | 5,805円~7,075円 | ※2 |
14,150円(上限額)超 | ― | 7,075円(上限額) | ※1 |
(表C) 給付率表C:45歳以上60歳未満
賃金日額 | 給付率 | およその基本手当日額 | 算出方法 |
2,289円以下 | ― | 1,832円(下限額) | ※1 |
2,290円以上~4,580円未満 | 80% | 1,832円~3,663円 | ※2 |
4,580円以上~11,610円以下 | 80~50% | 3,664円~5,805円 | ※3 |
11,610円超~15,550円以下 | 50% | 5,805円~7,775円 | ※2 |
15,550円(上限額)超 | ― | 7,775円(上限額) | ※1 |
(表D) 給付率表D:60歳以上65歳未満
賃金日額 | 給付率 | およその基本手当日額 | 算出方法 |
2,289円以下 | ― | 1,832円(下限額) | ※1 |
2,290円以上~4,580円未満 | 80% | 1,832円~3,663円 | ※2 |
4,580円以上~10,460円以下 | 80~50% | 3,664円~4,707円 | ※4 |
10,460円超~14,860円以下 | 50% | 4,707円~6,687円 | ※2 |
14,860円(上限額)超 | ― | 6,687円(上限額) | ※1 |
これにて、およその基本手当日額がわかるようになりました。
5.正確な基本手当日額を知るには計算が必要
上記の給付率表A~Dは、あくまで「およその基本手当日額」となっています。
自分が受け取ることができる、もっと正確な基本手当日額を知りたい方は、ご自身で計算をしていただく必要があります。
なぜならば、離職前6ヶ月分の賃金合計が、人それぞれ違っているからです。
では続いて、もっと正確な基本手当日額を知りたい方に向けて、基本手当日額の算出方法をご説明します。
正確な基本手当日額の算出方法
正確な基本手当日額を知るためには
正確な基本手当日額を知るためには、ご自身の賃金日額をもとに、上で説明した表AからDの「給付率表」をご覧いただき、ご自身の当てはまる算出方法「※1~※4」を確認した後、下記の表2に照らし合わせて計算をする必要があります。
算出方法は、以下の表の通りです。算出方法をご覧ください。
(表2)基本手当日額の算出方法
算出方法 | |
※1 | 基本手当日額=給付率表に記載の額(下限額或いは上限額) |
※2 | 基本手当日額=賃金日額×給付率(0.8或いは0.5) |
※3 | 基本手当日額=((-3×賃金日額×賃金日額)+(69,980×賃金日額))÷70,300 |
※4 | 1.基本手当日額=((-1×賃金日額×賃金日額)+(18,020×賃金日額))÷16,800 2.基本手当日額=(0.05×賃金日額)+4,184 ※1か2のいずれか低い方の額 |
算出方法は、以上のようになっています。
では続いて、具体的に例をあげて計算してみます。ご自身に近い例を参考にしてください。
基本手当日額についての注意事項
算出した「およその基本手当日額」は、あくまで目安の金額になります。なぜならば、失業保険の給付金額は、年度や条件によって金額が変わってくるからです。
- 基本手当日額は、毎年8月1日に改定される
- 離職理由(自己都合・会社都合)によって、給付される日数が変わる
「1.」について説明します。
失業保険(基本手当)の給付額計算は、雇用保険法の規定によって毎年8月1日に改定されます。
これは、前年度の勤労統計における平均給与額の変動比率に応じて、その年の給与水準にあわせて修正されているためです。
「2.」につきましては、次の「失業保険の給付日数は?」で説明します。
失業保険の給付日数は?
ここまで、1日あたりの給付額である基本手当日額について説明してきました。失業保険で受給できる総額は、基本手当日額を何日間もらうことができるのか、給付を受けることができるのか、で決まります。
では、いったい何日間もらうことができるのでしょうか。
所定給付日数の上限日数は?
失業保険を受けることができる日数の上限は、
- 離職時の年齢
- 被保険者として雇用されていた期間、いわゆる勤続年数
- 直近の離職理由
などにより、表3のとおり決められています。これを「所定給付日数」といいます。
(表3)所定給付日数の確認表
(1)自己都合退職、定年退職、契約期間満了の場合 ※(2)及び(3)以外のすべての離職者が該当
被保険者であった期間 | |||
離職時の年齢 | 10年未満 | 10年以上 20年未満 |
20年以上 |
65歳未満 | 90日 | 120日 | 150日 |
—
(2)倒産、解雇、一定の要件を満たす雇止めなど会社都合で離職した場合 ※(3)の場合を除く
被保険者であった期間 | |||||
離職時の年齢 | 1年未満 | 1年以上 5年未満 |
5年以上 10年未満 |
10年以上 20年未満 |
20年以上 |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ― |
30歳以上35歳未満 | 180日 | 210日 | 240日 | ||
35歳以上45歳未満 | 240日 | 270日 | |||
45歳以上60歳未満 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 | |
60歳以上65歳未満 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
—
(3)障害者等の就職困難者
被保険者であった期間 | ||
離職時の年齢 | 1年未満 | 1年以上 |
45歳未満 | 150日 | 300日 |
45歳以上65歳未満 | 360日 |
所定給付日数の考え方
所定給付日数は、基本的に勤続年数が1~9年であれば90日間、10~19年であれば120日間、20年以上であれば150日間が上限となります。
勤続年数、つまり「被保険者として雇用されていた期間」には、今回働いていた会社の期間だけでなく、以前に働いていた会社で雇用保険に加入していた期間も通算することができます。通算には一定の条件がありますので、詳細はハローワークで確認するとよいでしょう。
結果、受給できる失業保険の総額は?
基本手当日額と、給付日数がわかれば、それを掛け合わせた額が、ご自身が受給できる失業保険の総額の目安となります。
- 失業保険の総額 = 基本手当日額 × 給付日数
これが、受け取ることができる失業保険の総額になります。
1ヵ月あたり失業保険はいくらもらえるの?
これで失業保険を受給することができる総額がわかりました。では、1ヵ月あたりではどれくらい受給することができるのでしょうか。
失業保険を毎月受け取るためには、「求職活動を行う」「失業認定日に失業認定申告書を提出する」といった条件があります。
条件をクリアしたうえで、かつ「アルバイト」「パート」「内職」「お手伝」などの就労活動をしなかった場合に、最大で約28日分(4週間分)の基本手当日額を受け取ることができます。
つまり、1ヵ月あたりで受け取ることができる受給額の満額は
- 1ヵ月あたりの失業保険の受給額 = 基本手当日額 × 28日分
と考えることができます。
「バイト」「内職」「手伝い」などの就労活動をした場合は、満額である28日分から就労活動した分が差し引かれていきます。
失業保険を受給するための詳しい手続きについては「Q.失業保険をもらうための手続きとは?」をご覧ください。
失業保険の総支給金額についてのまとめ
会社を辞めた時に受給することができる失業保険の金額について説明してきました。
わかりやすくまとめると、
- 失業保険で受給できる金額の総額 = 基本手当日額 × 給付日数
- 基本手当日額 = 会社を退職した時の年齢・賃金(給与・給料)によって異なる
(表1)と(表A)~(表D)、および(表2)参照 - 給付日数 = 会社を退職した時の年齢・勤続年数・退職理由によって異なる
(表3)参照
となります。
失業保険の支給額の計算まとめ
失業保険で受け取ることができる金額の計算については、雇用保険の手続きをした際にもらえる冊子(雇用保険の失業等給付受給者のしおり)にも記載されています。
不明な点があれば、ハローワークの職員に質問すれば正確な金額を説明してくれます。一度質問してみるとよいでしょう。
続いて、失業保険の受給資格・条件について知りたい方は「Q.失業保険をもらえる条件・受給資格って?」を、受給する手続きについて知りたい方は「Q.失業保険をもらうための手続きとは?」をご覧ください。